日産・スカイラインは、長らく日本を代表する名車と言われてきましたが、ここ20年ほどは人気が低迷しています。
もちろん、車好きを中心に今も人気はあるのですが、たいてい1990年代までに発売されたモデルが中古で高値を付けているという状況です。
2000年代以降に発売された2つのモデルは散々な評判で、そうした状況を打破するために2014年から投入されたのがV37型です。
約10年経ちますが、2019年にビッグマイナーチェンジが行われており、前期と後期で大きな違いもあります。
今回は、最新のスカイラインに興味を持っている方のため、前期と後期の違いを比較してみましょう。
Contents
V37型が投入された背景と前期モデルの特徴
スカイラインの人気が低迷していると言いましたが、実は2001に発売されたV35型は、海外では好評でした。
仏ルノーと提携し、日産の経営体制が変わった直後だけに、だいぶ海外市場を意識したのでしょう。
その反面、旧来のスカイライン像からはかけ離れ、日本では不評でした。
このギャップは、続くV36型でもさほど埋まりませんでした。
こうした失敗を意識して生まれたのがV37型です。
*V37型前期モデルで意識された違い
一見すれば明らかですが、V37型前期モデルでは、形状がややシャープになりました。
V35・V36型をめぐっては、そのスカイラインらしからぬ形状が不評でしたので、まずは形状を見直したというところでしょう。
また、スカイラインとしては初めてと言えますが、燃費等の経済性にも目配りしたパワートレインも注目されました。
基本グレードである200GT-tの排気量は1991ccでしたが、不足分をターボチャージャーで補っており、1990年代までのスカイラインを思い起こさせるパワートレインとなりました。
しかも、国土交通省から「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」に認定されるまで環境基準も改善させました。
スカイラインとしては歴代最高の燃費を実現した350GTハイブリッドモデルも投入され、V37型前期モデルは、新しい時代のスカイラインを模索した1つの答えでした。
*V37型前期モデルへの不満
V37型前期モデルへは、先に見たような評価の声だけではなく、もちろん批判もありました。
何と言っても、V35型から意識され出した高級車路線は、基本的に継続されました。
とりわけV37型前期モデルでは、ゴルフバッグ等を積むことも意識してトランクが拡張されるなど、高級車志向が明らかでした。
スカイラインの伝統的なファンには、実用性よりも走行性能を重視する方も多いため、このコンセプトの違いは埋まらなかったと言えます。
さらに、そうした不満を助長したのが、海外向けブランドであるインフィニティのバッジが装着されるなど、スカイラインの伝統路線からの脱却が意識されたことです。
これら一連の動きは、スカイラインの伝統的ファンを落胆させ、形状やパワートレイン等での改善を帳消しにしたと言えるでしょう。
2019年にビッグマイナーチェンジが行われた背景と後期モデルの特徴
2019年に、V37型はビッグマイナーチェンジを断行され、現行の後期モデルが発売されました。
日産が誇る先進運転支援技術が標準装備され、大々的なキャンペーンも展開されました。
スカイラインが日産を代表する車種であることを再認識させるビッグマイナーチェンジでしたが、その背景と特徴を整理しておきましょう。
*V37型後期モデルで意識された違い
前期モデルは、形状や経済性といった点で評価された一方で、スカイラインらしさに欠けるという近年の傾向は変わりませんでした。
そのような中で後期モデルが登場したわけですが、かなりの程度スカイラインらしさを取り戻す試みがされました。
まず、インフィニティのバッジが廃され、日産のロゴバッジが装着されるとともに、フロントの形状も日産車とわかるVモーショングリルに変更されました。
くしくも日産の経営体制が変わろうとしていた時期であり、日産車を代表するスカイラインが無縁であったはずはありません。
さらに、スカイライン史上最高の400馬力を誇る400Rが加わるなど、走りを重視するスカイラインの伝統的なファンを意識したグレードが加わりました。
*V37型後期モデルへの不満
後期モデルの利点と欠点は、前期モデルの利点と欠点がそのまま逆になった感じです。
日産車の特徴であるVモーショングリルを採用したわけですが、形状もやや丸みを帯び、先々代へ回帰した印象です。
また、何と言っても経済性の悪化は顕著です。
排気量が増えた基本グレードだけならわかるのですが、ハイブリッドモデルの燃費まで極度に悪化し、正直なところハイブリッドモデルのメリットはほぼありません。
最近でも、後期モデルの新車より前期モデルの中古車の方をよく見かける印象なのですが、その背景には悪化した後期モデルの経済性が反映している可能性もあります。
前期・後期の違いを徹底比較!
V37型の前期モデルと後期モデルを比較すれば明らかですが、すべての利点を等しく活かすことはなかなか難しいようです。
もちろん、だからこそモデルチェンジやマイナーチェンジが行われ、違いも生まれると言えばそうなのですが、スカイラインV37型の場合は疑問点も少なくありません。
今回は最後に、その点を確認しておきましょう。
*ビッグマイナーチェンジでスカイラインらしさは戻ったか
2014年発売の前期モデルは、経済性という点で相当なパフォーマンスを示したわけですが、スカイラインらしさを失ったのが難点でした。
その意味で、2019年のビッグマイナーチェンジは、スカイラインらしさを取り戻す第1歩になったとは言えるでしょう。
しかし、燃費が極度に悪化した点をどう見るかは、難しい問題です。
これが、走りを追求した結果として燃費が悪化したというだけならまだしも、日産がスカイラインの改良をあきらめたとすれば大問題です。
日産がスカイラインの廃止に踏み切るといったデマも、そうした日産のスタンスに対する懐疑の念から生まれたのでしょう。
*ポストV37型はあるのか
V37型の前期・後期モデルの違いを比較して明らかなのは、スカイラインのコンセプトの根本自体が大きく揺らいでいるということです。
1998年に発売されたR34型までは、走りを追求する根っからのファンをターゲットにしているという根本部分は、決して揺らぎませんでした。
それが、すでに見た通りV35型から高級車路線に大転換し、その後もそうしたコンセプトは改められていません。
その間、環境規制の強化等もあり、ハイブリッドモデルを投入し、ガソリン車の燃費も改善するなど、経済性重視のスタンスも打ち出しました。
ところが、2019年のビッグマイナーチェンジは、燃費度外視でかつてのスカイラインらしさへの回帰が打ち出され、またもや根本部分が変わったのかと思わせるものでした。
ポストV37型を成功させるとすれば、何より根本部分はぶれないという強いスタンスを打ち立てる必要があると言えるでしょう。
スカイラインv37の前期と後期の違いとは?【まとめ】
今回は、スカイラインV37型の前期・後期モデルを比較し、その違いを見てみました。
スカイラインに限りませんが、昨今はセダンタイプの車にとって厳しい時代です。
しかし、少子化や世帯人員の減少が進む日本で、ミニバンやSUVの全盛時代が永続するわけはないとも考えられます。
もちろん、それならコンパクトカーや軽自動車へシフトすると言われそうですが、長距離のドライブが趣味だとか、走行性能を重視するといった車好きは一定数残るでしょう。
そうしたコアな車好きをいかに捉えるかこそスカイライン復活のカギであり、逆に言えば根本部分を2度とぶれさせてはいけないということです。