スカイラインは日産の人気車種ですが、2001年に発売された11代目V35型からはやや低迷しました。
続く12代目V36型でも形勢は変わらず、そんな中の2014年に発売されたのが13代目V37型です。
スカイライン初となるハイブリッドモデルも投入され、いわばスカイラインの起死回生を賭けたモデルと言えますが、もう1つ注目されたのが基本グレードである200GT-tです。
前の2モデルに比べれば「小柄」で、ややスマートさを復活させたモデルとなりました。
馬力が減っただけ遅いという評価も聞きますが、燃費のよさを評価する声もあります。
今回は200GT-tへの評価を、改めて検証してみましょう。
スカイライン200GT-t投入の背景
V35型で打ち出されたスカイラインの高級車化路線は、海外では評価されたとはいえ、日本国内では明らかに不評でした。
デザインにおけるシャープさ・スマートさと走行性能を売りにしたのがスカイラインであり、決して高級感が欲しいわけではないというのが伝統的ファンの姿勢だったと言えます。
続くV36型でも基本姿勢は変わりませんでしたが、V37型では変化が見られました。
その象徴が200GT-tです。
*200GT-tが復活させたスカイラインらしさ
200GT-tに限らず、V37型が見せたデザイン上の特徴が、スカイラインらしさの復活です。
ヘッドライトやボンネットの形状を見れば明らかですが、シャープさが復活しています。
もちろん、黄金時代の3モデル(R32型、R33型、R34型)とは比較になりませんが、それでもV35型やV36型のような「丸み」は極力排されました。
2019年のビッグマイナーチェンジも、フルモデルチェンジではなかったところに、このV37型を基本とする姿勢が現れています。
*200GT-tの特徴
200GT-tの特徴は、デザインもさることながら、そのパワートレインにあります。
昭和・平成初期のスカイラインをご記憶の方にはわかるでしょうが、かつてのスカイラインはターボチャージャーで馬力を強化する方法をよく採用しました。
これは、エンジンをやたら高性能化することによって高額化してしまうことを防ぎ、走りとリーズナブルさを両立させるうまい方法だったと言えます。
200GT-tは、まさに往年のスカイラインを思わせるパワートレインを採用しました。
排気量自体は1991ccと、近年のスカイラインでは異色の小ささですが、4気筒エンジンの馬力をターボチャージャーで強化し、実質的には2500ccレベルの馬力を実現しています。
あまり車好きではない方にはわかりづらいのですが、この点こそ200GT-tの最大の特徴です。
スカイライン200GT-tの馬力と燃費を徹底比較!
スカイラインらしさが部分的に復活したのは喜ばしいとしても、発売当初の価格は383万円ほどで、高級車路線は一層強まってしまいました。
あとは走行性能と燃費次第ということで、ここではそれらを見ておきましょう。
*スカイライン200GT-tは本当に遅いのか
今回の記事のテーマでもありますが、200GT-tは遅いと不満を漏らす方もいるようです。
この声をどう評価するかは難しい問題です。
そもそも排気量が1991ccで、馬力の目安となる最高出力が211ps(155kW)/5500rpmです。
V36型の250GTは排気量が2495ccで最高出力が225ps(165kW)/6400rpmでしたから、馬力が小さくなったのは事実です。
しかし、加速性能を示す最大トルクは、250GTが258N・m/4800rpmなのに対し、200GT-tは350N・m/1250~3500rpmなので、200GT-tの方が加速性能はかなり上なのです。
ちなみに、スカイライン黄金時代の最後を飾ったR34型GTは、6気筒エンジンではありましたが、最高出力が155ps(114kW)/6400rpm、最大トルクが186N・m/4400rpmでしたから、200GT-tに遠く及びません。
つまり、直前のV36型に乗り慣れていた方にとっては、加速性能は実感できるものの、定速走行の段階に入ると力不足を実感し、遅いと評価したのかもしれません。
ですから、何を基準に評価するかで、自動車への評価は上下どちらにも振れるのです。
*スカイライン200GT-tの燃費をどう評価するか
ターボエンジン車に乗ったことのある方であればわかると思いますが、ターボエンジン車の加速力は抜群です。
他方で、高速道路等での定速走行段階ではほとんどメリットを感じられません。
エンジンの出力(馬力)が弱ければ、いくらターボエンジンでも力不足を露呈し、何度もアクセルを踏むことになります。
そのため、昭和時代に比べれば、ターボエンジン車は確実に減りました。
ですから、200GT-tの評価はますます難しいのですが、燃費の方はどうなのでしょうか。
実は、200GT-tの燃費は13.6km/lなので、スカイラインとしては大したものです。
200GT-tが登場するまで、ハイブリッドモデルを除くスカイラインで最も燃費がよかったのは8代目R32型GXiの12.6km/lだったので、約25年ぶりに記録を塗り替えたことになります。
しかも、GXiはMT車だったので、AT車でこれほどの燃費を実現したのは200GT-tが初めてです。
200GT-tの燃費は、現時点で、スカイラインのガソリン車としては最高のパフォーマンスとなっています。
*スカイライン200GT-tの人気
ここまで見てきたように、200GT-tは長所と短所をあわせ持っており、評価が難しい車です。
どれくらいの人気なのかを見るのに中古価格はうってつけの指標ですが、某中古車検索サイトでは200GT-tが128台ヒットしました(2023年10月5日時点)。
車両本体価格の最高値を見ると、2018年式200GT-tタイプSPの297万円でした。
まだまだ新しいモデルであり、プレミアが付かないことをふまえれば一見妥当とも言えますが、タイプSPは最高級グレードで、新車価格は416万4千円ほどでしたから、かなりのダウンです。
他方で最安値を見ると、2014年式200GT-tの標準グレードが88万円でした。
結論としては、可もなく不可もない価格帯に落ち着ているということが言えます。
スカイライン200gtは遅い?【まとめ】
今回は、様々な評価が入り乱れているスカイライン200GT-tについて見てきました。
数値だけを見れば、200GT-tは前後のモデルに決して負けてはいないのですが、運転した時の実感と数値には乖離があるものです。
数値上は馬力を維持しているように見えても、いざ運転してみると先代モデルより遅いと感じた方も多いというのが、様々な評価の原因になっていると思われます。
他方で、ガソリン車のスカイラインとしては歴代最高の燃費を達成したことも忘れてはいけないでしょう。
スカイラインらしさを部分的にでも復活させたモデルであり、遅いのかどうかも含めて、200GT-tの評価はこれから徐々に定まっていくものと思われます。