日産・スカイラインはスポーツセダンとして有名ですが、伝統的にファミリーカーとして使うユーザーも想定してきました。
そのため、いくつかのモデルでは走りに特化したグレードも並行して開発されたことがあり、それがGT-Rです。
標準グレードとは別にGT-Rを設定し、車好きの要求にも応えようとしてきたわけですが、GT-Rの設定が見送られたモデルもあります。
今回は、スカイラインにおける標準グレードとGT-Rの違いを改めて整理し、特徴に注目した見分け方についてもご紹介します。
Contents
スカイラインGT-Rのはじまり
初期のスカイラインは、むしろファミリーカーに寄せたコンセプトで開発されました。
それが走り重視のスポーツセダンへ脱皮するきっかけとなったのは、何と言ってもレースでの華々しい活躍です。
*スカイラインのグレードとしてのGT-R
GT-Rという車名は、もともとスカイラインの1グレードの呼称でした。
初めてGT-Rがグレードとして加わったのは、通称ハコスカと呼ばれた3代目C10型です。
2代目S5型がレースにおいてポルシェと互角の闘いを演じたこともあり、スカイラインの名声は急速に高まっていました。
また、当時は車優先とすら言われた時代で、とにかく馬力と加速性能を兼ね備えたエンジンを搭載する車種は憧れの的でした。
そうした時代背景もあり、走行性能を重点的に鍛えたグレードとしてGT-Rがスカイラインに加えられたのです。
以後、4代目C110型、8代目R32型、9代目R33型、10代目R34型においてGT-Rが設定され、2002年の販売終了まで、スカイラインのブランド価値に貢献しました。
*独立車種としてのGT-R
スカイラインの人気は、2001年に発売されたV35型から決定的に低迷します。
それまでの走行性能を重視したスマートなイメージからは程遠い、高級車路線に転換したためです。
そうした批判を受け止め、車好きの要望に応えるべく2007年に発売されたのが、スカイラインからは完全に独立した車種としてのGT-Rです。
スカイラインの大きな特徴である丸型のテールランプ等は引き継いだものの、最高出力や最大トルクを見れば明らかですが、パワートレインがあまりに別格で、もはやスカイラインとは同列に語れません。
販売価格もずば抜けており、今では一目見ただけでGT-Rとわかる存在のため、以降では割愛します。
スカイラインGT-Rの前期
スカイラインの1グレードとしてのGT-Rの歴史は、前期と後期に分けることができます。
前期は、3代目C10型と4代目C110型に設定された1969~1973年です。
後期は、8代目R32型、9代目R33型、10代目R34型に設定された1989~2002年です。
*前期GT-Rの外観上の違い
スカイラインGT-Rから今日の独立したGT-Rまで引き継がれている特徴の1つが、2ドアであることです。
いわゆるクーペで、快適性や実用性を切り捨て、走りのみを追求した究極の形状です。
そのため、標準グレードのスカイラインとGT-Rの見分け方の1つとして、セダンかクーペかという点を挙げることができます。
ただし、C10型とR33型のGT-Rにのみ4ドアセダンが設定されていたので、100%当てはまるわけではありません。
確実な違いとしては、自動車の「顔」とも言えるフロントグリルの形状や、時計、ヒーター、ラジオといったオプション装備の有無があります。
つまり、走りを重視したGT-Rには、走行性能と関係のない装備が施されていませんでした。
*前期GT-Rのメカニックな違い
スカイラインの標準グレードとGT-Rの違いというのが今回のテーマですが、そもそも車好きであればエンジン音を聞いただけで即座にわかります。
すでにC10型の時点で、標準グレードとGT-Rの馬力には1.5倍近い差がありました。
そのため、標準グレードのスカイラインのエンジン音を聞き慣れていれば、当然ながらGT-Rのエンジン音をすぐ聞き分けることができました。
*約16年ものブランクはなぜ生まれたのか
C110型でもGT-Rは設定されましたが、C110型の販売終了後、GT-Rは3代にわたって設定されませんでした。
その理由は、GT-Rが走行性能に特化した別格の存在だからというものです。
さほど車好きではない方にとってはできすぎた話に聞こえるかもしれませんが、当時は自動車の走行性能が何より重視された時代です。
現在では環境基準が厳しく審査されますが、当時は走行性能が厳しく審査されたのです。
そのため、GT-Rの名を冠するのにふさわしくないと判断される可能性は大いにありました。
事実、5~7代目のスカイラインはやや高級車に寄せたコンセプトで開発され、快適性を重視して大型化しました。
その分、走行性能は犠牲になっており、走りに特化したGT-Rが設定されなくても不思議ではなかったのです。
スカイラインGT-Rの後期
今から見れば、5~7代目のスカイラインにも良さはあったのですが、走りを重視するファンからは不満もありました。
そうした背景から、8代目R32型ではGT-Rが復活しました。
以後、10代目R34型まで、GT-Rを含むスカイライン・シリーズは黄金時代を迎えます。
*後期GT-Rの外観上の違い
8~10代目スカイラインの標準グレードとGT-Rの外観上の違いですが、まず標準グレードはだいぶファミリーカーに寄せたコンセプトで開発され、おとなしい形状でした。
それに比べるとGT-Rは、リアウィング(いわゆる羽根)を搭載し、その他のリア回りも彫りが深く、一目でわかる形状でした。
その他の細かい違いとしては、8代目の場合、フロントグリル(GT-Rにはあります)、ホイール(GT-Rのホイールは立派です)、バンパー(GT-Rはややごつい)等が挙げられます。
10代目の場合は、やはりフロントグリルの形状が異なりますが、何より随所にGT-R専用エンブレムが配されるなど、スカイラインの1グレードとしては最後となったGT-Rにふさわしい特別仕様になっています。
*後期GT-Rのメカニックな違い
スカイラインGT-Rの最初で最後の黄金時代にふさわしく、8~10代目のGT-Rのパワートレインは、説明を要しないほど標準グレードとは違います。
エンジン音もそうですが、発進・加速の様子を見れば一目瞭然で、GT-Rは別格です。
今でも、8~10代目のスカイラインを道路で見かけることがありますが、多くはGT-Rという現象が起きています。
2020年代になった今でも当時のスカイラインに乗っているのはよほどの車好きですから、やはりGT-Rを必然的に選ぶのだと思います。
スカイラインgtrの違いとは?【まとめ】
スカイラインGT-Rは、2002年にその幕を閉じました。
2007年からは、超高級車として独立したGT-Rが発売されているわけですが、もはや一般的な車好きにとっては縁遠い存在になりました。
もちろん、セダンが敬遠され、ミニバンやSUV、軽自動車やコンパクトカーが良しとされる時代ですから、スポーツカーへの風当たりが強くなるのはやむを得ません。
しかし、だからこそ、もう1度スカイラインGT-Rを復活させてはどうかと思います。
今の時代でも、セダンやスポーツカーに興味を示す車好きは少数ながらいるわけですから、そうした数少ない購買層をターゲットにするなら、多少リーズナブルにする方が得策なような気もするのですが…