アウディは、ドイツの3大高級車ブランドの一角として、日本でも人気です。
技術的にもデザイン的にも革新的な車種を投入し続け、メルセデス・ベンツやBMWといったライバルとは一線を画しています。
そんなアウディの車種で、最近とりわけ人気なのがRS3です。
セダンとスポーツバックが用意されていますが、どちらもスポーツカーの領域にも達しており、そのバランスが人気の理由です。
ところが、アウディ・RS3がなかなか買えないそうです。
その理由を探ると、自動車業界を取り巻く世界情勢の変化が影響しており、生産・在庫状況は今後ますます厳しくなることもわかりました。
今回は、アウディ・RS3が買えない理由をヒントに、今後の輸入車市場の動向も予想します。
Contents
アウディ・RS3が買えない程、人気の理由
アウディ・RS3と言われても、正直なところ「どれだけすごいの?」という方もいるはずです。
まずは、アウディのラインナップの基本と、RS3の特殊性を確認しておきましょう。
*アウディRSモデルとは?
アウディには、もともとSシリーズがあります。
セダンを中心に、リーズナブルな車種から高級車種まで網羅した基本シリーズはAシリーズです。
そのAシリーズをベースとして、エンジンその他の装置をスポーツカー並みにレベルアップさせたシリーズがSシリーズということです。
ちなみに、SUVを中心としたQシリーズにも同様の上級シリーズがあり、そちらはSQと呼ばれ、区別されています。
そして、本題のRSシリーズは、Sシリーズの中でも特にスポーティーな最上級シリーズです。
日常的な使用も考えている人にとってはSシリーズがおすすめで、とにかく走りを追求したい人にはRSシリーズがふさわしいということです。
アウディ自慢のquattro(全輪駆動システム)を全車種に搭載し、インテリアやエクステリアも高級感溢れる仕上がりです。
*アウディ・RS3の特徴
アウディRS3は、ほぼスポーツカーでありながら、日常的な使用にもふさわしい点を売りにしています。
スポーツカーというのは、一般的に走りのみを追求しています。
そのため、車内やラゲッジスペースが狭くなったり、燃費が悪化したりといったトレードオフが発生します。
しかし、アウディ・RS3は、実用性と趣味性のバランスを絶妙に保っています。
アウディ・RS3のセダンは4ドア、スポーツバックは5ドアハッチバックとなっており、実用性に問題はありません。
デザインも落ち着いた格好良さを漂わせており、過度にスポーティーではありません。
たとえば、アウディ・R8なんかで買物に出かけたら目立って仕方ありませんが、RS3はそんなこともありません。
他方で、エンジンはアウディ自慢のTFSIを採用し、5気筒の直噴ターボエンジンなので、走りも忘れずに追求しています。
最高出力400馬力、100km/h加速時間が3.8秒というのが、アウディ・RS3の売りとなっています。
以上のようなバランスの良さが、アウディ・RS3が人気を博している理由です。
*アウディ・RS3が買えない理由
アウディ・RS3は傑作と言えますが、パワートレインにも、RSトルクスプリッターと呼ばれる、quattroの新技術が採用されています。
RSトルクスプリッターの仕組みを簡単に言えば、加速しようとするエンジンの力を前輪・後輪にバランスよく配分し、左右の配分は自由に変えられるというものです。
たとえば、カーブでは前の外輪に力を重点的に配分することで、スムーズなコーナリングを実現します。
その他、真っすぐのドライビングが続く時は均等配分、高速巡行時には前輪のみに力を伝えて燃費を抑制するなど、まさに高度な技術です。
こうした高度な制御を可能としているのは、アウディ自慢の電子制御システムであり、そのシステムを支えているのが半導体です。
まさに、アウディ・RS3がなかなか買えない最大の理由は、例の半導体不足です。
半導体不足を受け、アウディはRS3の装備を一部変更したほどです。
エンジンやパワートレインのほかにも、それらの現状をドライバーに知らせる車載ディスプレイや、ドライバーを自動的にアシストするシステムは、すべて半導体に支えられています。
アウディ・RS3と日本市場
アウディ・RS3が輸入車であることを忘れてはいけません。
輸入車である以上、その生産や在庫状況は世界情勢の影響をストレートに受けます。
日本車ですら、生産や在庫状況が不安定化している状況です。
*日本の輸入車市場の現状
JAIA(日本自動車輸入組合)によると、2022年の輸入車(日本車の逆輸入を除く)の販売台数は、2021年に比べて6.7%減でした。
ところが、メルセデス・ベンツの1.3%増等を除けば、ドイツ車は減少幅が大きく、半導体不足の影響をストレートに受けたと言われています。
たとえば、BMWの14.0%減を筆頭に、フォルクスワーゲンが8.5%減、アウディが7.9%減等となっています。
今年に入ると、状況はやや好転したようですが、まだまだ半導体不足は尾を引き、生産や在庫状況が安定化したとは言えません。
しかも、最近の為替レートが円安に振れていることから、半導体不足とは別の不安定化要素も顕在化しています。
*アウディ・RS3の生産・在庫状況とは?
現在では珍しい5気筒エンジンであることもあり、アウディ・RS3は日本でも人気です。
アウディ・RS3が久々に日本に上陸すると発表された2020年7月には、自動車業界でちょっとした話題になったものです。
当時はコロナ禍の真っ只中で、日本でも安心して移動できる手段として、マイカーのニーズが再び高まった時期でした。
アウディがRS3を日本市場へ再投入した背景にも、そうした動きがあったのでしょう。
しかし、当時は日本円のレートも安定していたので、今とは状況が異なりました。
その後、半導体不足、急激な円安、そしてコロナ禍の収束といった状況が重なり、輸入車の生産・在庫状況はひっ迫し、買えないという事態が起きたわけです。
*今後の見通し
アウディ・RS3の今後の生産・在庫状況ですが、少なくとも日本に限れば、ますます厳しさを増すと思われます。
第1の理由としては、半導体不足が完全に解消されたとは言えず、自動車メーカーは重点市場の優先順位を付けざるを得ないからです。
アウディの場合、アジアにおける重点市場は、何と言っても中国です。
衰退がささやかれているとは言え、今も中国は巨大市場で、富裕層の数も日本の比ではありません。
アウディ・RS3を買えないと同じように嘆いたとしても、日本市場が中国市場以上に重視されるとは思えません。
第2の理由としては、円安傾向が持続していることから、日本における販売価格が高騰し、そもそも買えない購買層が増加していることも挙げられます。
アウディ・RS3も1千万円目前という状況です。
アウディr3が買えない理由とは?【まとめ】
今回は、アウディ・RS3がなかなか買えない理由を探り、最終的には日本の輸入車市場の厳しい現状も浮き彫りにしました。
アウディに限らず、環境規制が非常に厳しい欧州で鍛えられた自動車メーカーは、どこも電気自動車の開発で先頭を行っています。
アウディもe-tronと呼ばれる電気自動車の技術を持っているため、日本での人気もますます高まっています。
しかし、反比例的に日本市場の魅力は低下しており、日本における輸入車の流通量が劇的に増えるとは思えません。
残念ながら、アウディ・RS3が買えないという状況は、今後ますます強まるというのが結論になります。