サービスエリアやパーキングエリア(以下ではサービスエリア等と呼びます)は高速道路上の施設のため、自動車で乗り付けて利用するというのが、基本的なアプローチです。
そんなサービスエリア等に、徒歩で入ることはできるかなどとは、考えないのが通常です。
ところが、全国の高速道路には、徒歩で入ることのできるサービスエリア等が、かなりあります。
そうすると、そうしたサービスエリア等を、待ち合わせ場所として利用できるのかという疑問も生じます。
そこで今回は、サービスエリア等の待ち合わせ利用の可否について検討してみます。
検討してみると、いろいろ矛盾が見つかりました。
Contents
サービスエリアは徒歩で入ることができるの?位置づけと一般開放の傾向
年配の方になるほど、サービスエリアに徒歩で入ることはできるかという疑問すら抱かないのではないでしょうか。
昔は高速道路というインフラ自体が未熟だったこともあり、自動車を運転できるようになってから利用する雲の上の公共施設だったのです。
*サービスエリア等の位置づけ
サービスエリア等という横文字の呼び方が定着していますが、法制度的には、どのように位置づけられているのでしょうか。
実は、サービスエリア等という用語自体は、法的根拠を持たない慣用的なものです。
ただし、サービスエリア等のような施設(専門的には利便施設と言います)を高速道路上に設置(専門的には連結と言います)するためには、高速自動車国道法という法律や、国土交通省等が定める省令・規則の基準に合致させる必要があります。
たとえば、2023年5月に国土交通省が公表した「高速道路利便施設の連結実施要領」では、サービスエリア等の設置許可基準が詳細に定められています。
そこでは、高速道路上でしか出入りできないサービスエリア等を閉鎖型、一般道からも出入りできるサービスエリア等を開放型と呼んでいます。
つまり、高速道路の運営主体から「利便施設」の設置許可を申請され、許可・設置された時にサービスエリア等になるわけです。
*一般開放の全国的な傾向
各種の法令でも、開放型のサービスエリア等を設置することは、今や当然に想定されています。
このような変化は、2005年の日本道路公団等の民営化を機に、一気に進みました。
と言うのも、それまで一種の「お役所仕事」で、どこへ行っても画一的で、厳格な規制を一律に適用していたサービスエリア等が、民営化を機に競争にさらされたからです。
その変化は目覚ましく、全国各地のサービスエリア等に、コンビニを含む民間事業者が続々と参入し、施設も華やかになりました。
中には宿泊施設を擁するものまで登場し、まさにサービスエリア等自体が目的地になる現象が生じました。
しかし、高速道路の利用者だけでは、サービスエリア等の利用者数も頭打ちになります。
また、サービスエリア等が豪華になるほど、高速道路を利用する必要のない地元住民からも、ぜひ利用したいという要望が寄せられるようになりました。
そこで、民営化後の高速道路各社は、サービスエリア等の従業員用通路を改修するなどして、高速道路を直接には利用しない地元住民等にもサービスエリア等を開放する事業を進めたのです。
その結果、徒歩で入ることのできるサービスエリア等は劇的に増え、今では閉鎖型のサービスエリア等の方が激減しています。
2023年末のデータで集計してみると、NEXCO東日本管内では65、NEXCO中日本管内では75、NEXCO西日本管内では50、JB本四高速では1つのサービスエリア等が開放型です。
ちなみに、一般道との出入口を、NEXCO東日本では「ウォークインゲート」、NEXCO中日本では「ぷらっとパーク」、NEXCO西日本では「ウェルカムゲート」、JB本四高速では「コミュニティゲート」と呼んでいます。
サービスエリア等の曖昧な法的根拠がもたらすグレーな解釈?
人間の発想力は豊かなもので、サービスエリア等に徒歩で入ることはできるとなると、「自動車を運転しなくても高速道路に入れるってこと?」というアイディアが必然的にひらめきます。
その結果、サービスエリア等で待ち合わせをし、他人の自動車に同乗して出かけるということも可能になります。
この待ち合わせの問題は、徒歩で入ることのできるサービスエリア等が増えるにつれ、問題化しているようです。
*高速道路上に徒歩で入ることは昔からできた?
実は、ここまで開放型のサービスエリア等が増える前から、徒歩で入ることのできる高速道路の施設がありました。
それが、高速バスの停留所です。
見かけたことのある方も多いと思いますが、本線車道の脇に高速バス専用の停車スペースがあり、利用者は道路脇から徒歩で入る仕組みです。
昔に比べると減りましたが、それでも高速バスが重要な交通手段となっているNEXCO西日本管内を中心に、今でも多くの停留所があります。
こうした高速道路上のバス停留所の歴史は長く、元をたどれば旧国鉄バスに行き着くと言われています。
ですから、誤解を恐れずに言えば、高速道路上に徒歩で入ることは昔からできたということです。
*高速道路各社は「待ち合わせ」を禁止しているが…
話は開放型のサービスエリア等に戻りますが、高速道路各社は、啓発ポスターや看板等で、開放型サービスエリア等での待ち合わせを禁止しています。
しかし、その根拠は極めて曖昧です。
第1に、高速バスの停留所が長い歴史を持つように、高速道路上に徒歩で入ることは昔からできました。
したがって、高速道路に徒歩で入る行為それ自体を根拠に、禁止することはできないはずです。
第2に、そう言うと今度は、待ち合わせが目的外行為に当たると言われそうですが、それならばサービスエリア等の一般開放を見直すべきではないでしょうか。
サービスエリア等を一般開放した時点で、高速道路利用者だけの「利便施設」ではなくなったはずなのです。
第3に、高速自動車国道法以下、高速道路に関わる法令、あるいは高速道路各社の約款等を見ても、サービスエリア等(利便施設)での待ち合わせを名指しで禁じているわけではありません。
もちろん、高速道路の通常の使用目的を逸脱するような行為は禁じられており、長時間・長期間の車中泊等が該当すると言われていますが、いずれにしても曖昧なままです。
考えてみれば、長時間・長期間の車中泊等は問題だと言いながら、待ち合わせを目的とした短時間の駐車はいけないというのも、何だか矛盾している気がします。
こうした疑問に、運輸当局や高速道路各社は、今後どのように対応していくのでしょうか。
サービスエリアは徒歩で入ることができる?【まとめ】
今回は、サービスエリア等に徒歩で入ることはできるのかという疑問から始まり、待ち合わせ場所としての利用の可否まで検討しました。
確認すれば、一応サービスエリア等での待ち合わせは禁じられていますが、法的根拠は極めて曖昧ということです。
このまま推移すれば、いわゆるライドシェアの解禁後に、問題が顕在化する恐れもあります。
ライドシェアが解禁されれば、徒歩で入ることのできるサービスエリア等を待ち合わせ場所に指定する例も、それなりに出てくると思われます。
高速バスはOKなのに、何で自家用車はNGなんだと問われれば、現状のままでは苦しい対応を迫られるかもしれません。
高速道路会社が営利法人である以上、利益は出た方がよいわけですから、サービスエリア等の待ち合わせ利用にも、柔軟に対応してはいかがでしょうか。